会社経営はビジョン(企業理念)からはじまる
そもそも会社経営とは何か?
企業活動とは,企業の活動指針となる基本的な考え方(企業の経営に対する信念や存在意義,取組方針,価値観など)を示すビジョン(経営理念)に沿った活動です。企業活動の目的は,売上とともに利益を上げ,健全な経営の下で永続的に企業を維持j・存続することであると言えます。企業活動を円滑に行う企業とは,多面的性質をもつ有機的な組織体です。 多面的・有機的な性質をもつ企業は,PDCA サイクル(Plan:計画,Do:実行,Check:点検,Action:次への行動)を繰り返すことで,時代のトレンドや環境に適合して発展を目指します。 また,企業活動のもう一つの重要な目的として,社会への貢献があります。企業は利益を上げ雇用を創ることが目的ではありますが,反社会的な企業や共存共栄ができない企業が存続していくことは難しいでしょう。企業活動の一環 として社会に貢献することが,企業価値の向上(企業の存続)につながるのです。
ビジョンから戦略、戦略から戦術へ
次に、企業を構成する要素をピラミッド型で表してみました。
この図からも明らかなように、企業経営はまずビジョン(経営理念)から成り立っています。それらが明確に定まってはじめて、「どの製品・サービスを」「どのターゲットに対して」「いくらで(価格)」「どれだけのリードタイム(納期)」「どのように販売・展開していくか」といった経営戦略が立てられます。もちろんそこには「自社(Company)」「競合他社(Competiter)」「顧客・市場(Customer)」の3Cの要素も含んだ上で検討がなされるべきです。そして、企業個々のオリジナリティ(独自性)や差別化要因を提供する製品・サービスに含めていくことで、顧客や市場から認知・理解され、受け入れられる製品・サービスとなります。そして、その延長線上で企業自体も顧客や市場から認知され、愛されるべき存在=ブランドとなり得るのです。これらカスタマジャーニーの果てにある企業ブランドの創生こそがすべての企業がめざすべきものであり、フルスロットルがご支援させて頂いている部分でもあります。では、ブランドとはどのように作っていくものなのでしょうか?
ブランディング=「ビジネスをデザインすること」
これは私たちフルスロットルがいつも言っていることですが、ブランディングとはロゴやデザインを変えることではありません。もちろん、アウトプットのひとつとしてシンボルロゴやカタログ・パンフレット、Webサイトなどのいわゆる「見た目のデザイン」がされたものを創ることも必要です。その前段階でもっと時間とパワーをかけて取り組むべきもの。それは「ビジネス自体のデザイン」です。デザインとはそもそも「目的を達成するために計画すること」という意味も持っています。何も目に見えるものをデザインすることだけを指しているワケではありません。
▼広義(こうぎ)のデザイン
「目標(目的)」を達成させるための「計画(設計)」をすること。
▼狭義(きょうぎ)のデザイン
「設計」した事に基づいて、具体的な「カタチ」を作ること。
(参考:BasicDesignNote デザインの基本を学び直すブログ)
上記のような「広義のデザイン」を実現するためには、企業という有機体=組織のけん引役である社長と徹底的に議論をし、シンクロする必要があります。会社経営のコト、製品・サービスのコト、社員のコト、売上・利益のコト、営業のコト、開発のコト、マーケティングのコト、財務のコト、これまでのコト、そして未来のコト。会社経営は0-1のデジタルな考え方で進められるようなものではありません。常にモノゴトは動いていますし、会社自体も生きているのです。その企業を構成するありとあらゆる要素を洗い出して整理し、SWOTや3c4pなどで体系化し、これからどういう戦略でどう攻めていくのか。そういった経営側面からの「ビジネスデザイン(計画)」がなされてはじめて、それを実現するためのツールとして「コミュニケーションデザイン(カタチ)」を作っていくことにつながるのです。そして、その「コミュニケーションデザイン(カタチ)」は、「ビジネスデザイン(計画)」の精度が高ければ高いほど、おのずとトーンコントロールがなされていくものです。進むべき方向が見えている、皆で実現していくべき目的が明確だからこそ、落とし込まれる「コミュニケーションデザイン(カタチ)」にブレや違和感がなくなるのです。
ブランド開発の手順「5 core method」
最後に、フルスロットル独自のブランド開発の手法「5 core method」をご紹介しておきます。これは、フルスロットル創業当初から提唱しているブランド開発フローです。はじめからいきなり「デザイン(カタチ)」を提示するのではなく、経営サイドとの十分な議論の末に得られる「デザイン(計画)」を大事にしたいという私たちの考え方、姿勢に起因しています。
これまで多くのブランド開発プロジェクトを進めていく上でベースにしていた独自のブランド構築理論「5 core method」。この考え方も多くのプロジェクトを通じて日々進化しブラッシュアップされてきました。突き詰めるところ、基本的なコトを如何に地道に進めていけるか。また、そこに企業独自のエッセンスをどう踏まえていくか。エッセンスの追加や付加価値の創造は、基本軸がしっかりしていることが前提になります。ですから、私たちは独自のプロジェクト推進軸を持つことに大きな意味を感じていますし、現在進行中のプロジェクトでもそれは間違いではないと確信しています。こと、目に見えない「ブランド」というものをカタチにしていくプロジェクトにおいてはこの基本軸はとても重要な考え方だと言えます。
【Phase1】 把握(ビジネスオーディット/デザインオーディット)
まず最初は、クライアント企業のビジネス全般がどういう状況であるか、社内外のデザイン的タッチポイントがどのような状況であるか、調査し、状況把握します。そしてそれらを精査し、今後の改善アクションのための素地をつくります。これは、コーポレートブランディング、アウターブランディング、インナーブランディング、プロダクトブランディング、サービスブランディング、リクルートブランディングなどいずれのアクションにおいても重要なフェーズとなり、ここで得られた情報がすべてのプロジェクトの明暗を分けるといっても過言ではありません。ここでのアウトプットの精度が高まり、クライアントへの理解度が深まることでシンクロ率が高まれば、マーケットにおける中小企業・中堅企業の差別化も実現することが可能です。
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【Phase2】 定義(ブランドパーソナリティ策定)
Phase1で整理された情報をもとに、ここからクライアントとともに対象となるブランドの方向性を定めていきます。企業の根幹に「ビジョン(企業理念)」があるように、ブランドひとつひとつにとってもブランドビジョンやブランドコンセプトは存在します。それらをひとつひとつ丁寧に関係者がひとつところに集まってディスカッションし、言語化をしていきます。(同じ「カッコイイ」でもいろんな「カッコイイ」がありますよね!自分たちの「カッコイイ」がどういう「カッコイイ」かを一意な言葉に置き換えていきます)その結果として、ブランドパーソナリティというブランド自体の個性を作り上げていきます。
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【Pahse3】 計画(ブランドプランニング)
Phase1、Phase2の成果をもとに、今後どのような内容の改善施策を、どのようなスケジュールで行うかのプランを作成します。株主・ステークホルダーへの事前開示、社内へのインプリメント、その後の展開、浸透など関連するすべてのアクションを書き起こし、企業ごとのイベントや制約条件などとも照らし合わせながら最適なプランをつくります。ただし、あくまでプランであり、特に中小企業においてはプロジェクト進行中において突発事項や追加検討事項などが頻繁に起こることが想定されますので、それを踏まえながら柔軟にどちらかというと「アジャイル型」でプロジェクトを進めていきます。いずれにせよ、成果物(結果)だけでなく、プロジェクト全体の進行(プロセス)においても関係者全員の合意と理解のもと、「OneTeam(全社一丸)」でプロジェクトを進めていきます。
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【Phase4】 開発(ブランド開発)
ここまでは結構地味な作業が多く、「ブランディング」の華々しいイメージとはかなりかけ離れた作業でしたが、ここでようやくブランドイメージを「言語化」したものを「可視化」していきます。ここまでの作業内容からお分かりの通り、ひとつのブランドを作り上げるためには十分な骨組み(骨格)を作る必要があります。「そこまでやるのか??」と思われるほど基礎構築に時間を費やします。そうやって生まれたブランドデザインやあやゆるタッチポイントは、おのずとブランドのエッセンスがふんだんに詰め込まれ、だれが見ても「らしさ」溢れる感性に訴えかけるブランドとして日の目を見ることができるのです。また、今後永続的にブランドを展開し、守り続けるためにも、ブランドガイドラインやデザインレギュレーションといった、ブランドに関する”取扱説明書”または”運用指南書”を作っておくことをオススメします。これが無いがゆえに、属人化し廃れていくブランドもまた多いという現実もあります。
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【Phase5】 運用(ブランド運用、展開、浸透、PDCA)
では、作り上げたブランドは誰が運用するのか?また、どのように運用するのか?基本的にはブランドマネージャーを設置し、ガイドライン・レギュレーションを元にブランドがブレることが無いようにしながら丁寧に運用していく必要があります。多くの中小企業ではブランディングプロジェクトを推進してきた社長自らブランドマネージャーになるケースもありますし、経営企画・事業推進的位置づけの方がいればその方々が中心となってブランドの維持・運用、そして継続的な展開や浸透に注力していきます。このフェーズではブランドを正しく認知・理解してもらうためのマーケティング施策もさることながら、ブランドは「生き物」ですので、時代の流れとともにブランド自体をブラッシュアップさせていく必要があります。そういう観点からもPDCAを回し、俯瞰的視点から評価もしながら改善を続けていくことはブランドをブランドとして存続させていくための重要な要素であると言えます。
いかがでしたでしょうか?
目に見える「デザイン(カタチ)」も重要ですが、それらの完成度、納得感を最大限に高めていくためには、経営側面からの「デザイン(計画)」=ビジネスデザインが重要であるということがお分かり頂けましたでしょうか。あくまで、これはフルスロットルの考え方であり、もちろん世の中にはほかにもいろんな考え方や手法があります。これからブランドを作る際に、どれが一番自分にとって最適かどうか、トライアンドエラーを繰り返してわかることも多々あるかと思いますが、少しでも短い時間でかつ少ないコストで最適解に到達できればいいですね。また、その際の一助になれば幸いです。