プロダクトブランディングは、製品を対象としたブランディングです。製品をブランド化することで、他社製品との差別化が可能になり、価格競争を避けることができます。プロダクトブランディングで期待できる効果や実際にどのような取り組みをするのか、コーポレートブランディングとは何が違い、どのような関係があるのかをまとめました。
Contents(目次)
プロダクト(製品)ブランディングとは
ブランディングとはブランドを構築する活動です。なかでも、プロダクト(製品)ブランディングは製品ブランドを確立するために行うものを言います。
消費者が製品に興味関心を持ち、他の製品との比較検討、そして購入に至るまでのプロセスに関わることはすべて、ブランドにへの態度に影響します。良い製品であれば買う、とは限らないのです。たとえば、魅力的なパッケージと面白みのない梱包とでは、製品への期待感が違ってくるかもしれません。また、高品質な製品であっても、どこがどう優れているのかを消費者が理解できなければ、比較検討の際には、品質のよくない製品と同等のものとして扱われてしまいます。
そこで、製品そのものの特徴のほか、製品を包むパッケージや商品名、商品の宣伝方法などをブランドのコンセプトに基づいて設計し、他の製品との違いをアピールしていきます。
その結果、消費者が他の製品との違いに価値を見いだすようになれば、製品ブランドを確立できたと言えます。
プロダクトブランディングで得られる効果
プロダクトブランディングを行うことで、次のような効果が期待できます。
- 製品に付加価値がつく
ブランド化することによって、製品の機能や仕様に対する評価以上に、好意的な評価を得られます。iPhoneと全く同じ仕様の製品でも、Appleマークがついていなければ、それを買うための行列ができたりはしないでしょう。消費者は商品を便利に使えるだけでなく、「使っていて楽しい」「使っていると良い気分になる」「持っていると自慢できる」といったような価値も見いだすため、他の製品に比べて高くても、そのブランドを買うようになります。 - リピート購入を促進する
ブランド化された製品を購入した顧客は次に購入する時には、一から他社製品と比較検討するような面倒なことはしません。一度、購入してよかったものは、また同じ価値を得られるものと予測して、再びそのブランドを購入するでしょう。そのようにして何度もブランドを利用するうちに、愛着もわいてきます。ブランディングによって、購入客には長年愛用してくれるファンになってもらうことができるのです。
プロダクトブランディングで制作するもの
製品をブランドとして識別してもらうために、プロダクトブランディングでは具体的には次のようなものを開発・制作していきます。
- 製品そのもの
製品の内容はブランドの中核となるものです。食品であれば、どういった原料を使い、どのような製法で、どのような味わいに仕上げるのか、家電製品ならば、どのような機能があり、どのようなデザインで、操作性や耐久性はどんなレベルなのか。すべてが高水準であれば良いというものでもありません。顧客が求めているものを注意深く観察し、ニーズにあったものにする必要があります。 - パッケージ
製品を包むパッケージはブランドの顔となるものです。特に、店頭で販売するような商品では、パッケージの良し悪しによって消費者が手にとる確率も変わるため、デザインを工夫することが大切です。他の製品のパッケージと似ていると埋もれてしまいますし、かといって奇抜なだけでは購買意欲を減退させてしまいます。ブランドの魅力を一瞬で伝えられるものにしましょう。 - ロゴ
ブランドを示すロゴは、ブランドには欠かせないものです。これがあることによって、他のものと識別することができます。“ブランドもの”を購入する際、正規品か模造品かを識別するために、ロゴに注目する人は多いでしょう。ロゴはブランドを構築する上で非常に重要な要素ですので、ロゴを開発した場合には関係者にロゴに関する取り扱い方法を説明するガイドラインもつくります。 - キャッチコピー
ブランドを記憶してもらうためには、ブランドの特徴をひと言で表せるような言葉があると効果的です。「ゾウが乗っても大丈夫」といったように製品の特徴を表すものや、「ママが笑顔になる」といったように製品から得られる効果を表すものがあります。製品の開発段階で必要となるコンセプトも短い言葉で表されるので似ていますが、キャッチコピーは消費者がどんなブランドなのかを思い出したり、人にブランドの話をしたりする場面で役立ちます。 - パンフレット、カタログ、Webサイト
ブランドについて良く知ってもらうためには、製品案内やブランドサイトが必要です。これらも単に情報を伝えるだけでなく、イメージにあったデザインで展開することで、ブランド価値を高めることができます。 - 広告
ブランドを広く知ってもらうためには、広告が有用です。広告は人の目を引くようなビジュアルであることも大切ですし、製品の特徴や効果がよく表されていることも重要です。また、広告を見たことで製品のイメージが良くなることも必要でしょう。また、どのような広告にするかだけでなく、どこに広告を掲示するのかもよく考えなくてはなりません。ターゲットとなる消費者がよく接しているメディアを選ぶと効果的です。
この他にも、製品に関わるものはすべてがブランディングの対象になります。これらの制作物をなんとなく雰囲気で作ってしまってはブランディングにはなりません。ブランドについてよく理解した上で、そのブランドのメッセージがしっかりと消費者に伝わるものにすることが大切です。
コーポレートブランディングとの違い
コーポレートブランディングは製品ではなく、企業を対象として行うブランディングです。自社の独自性を明確にし、取り扱う商品や広告などを通じて、ブランドを構築していきます。企業ブランディングでも製品のブランディングと同じように、ブランド価値が高まると、企業イメージや業績の向上につながります。このほか、企業ブランディングには社員の士気が向上する、採用がしやすくなるといった効果もあります。(コーポレートブランディングについての解説はこちら)
欧米ではブランディングといえば、プロダクトブランディングをさすことが多く、販売にあたっては企業名よりも製品名を全面に押し出しています。たとえば、紙オムツの「パンパース」やひげ剃りの「ジレット」を買う時に、これらがP&G社製であることを思い出す人は少ないのではないでしょうか。冒頭のイメージ図は企業名と製品名を紐付けたものですが、これを見ても製品名の方が馴染みのあるものが多いと思います。
一方、日本のプロダクト(製品)ブランディングでは「メーカー名×製品名」といったかたちでのブランディングが多く見られます。
日本ではメーカーブランドが強く、製品名よりも企業名を前面に押し出す方法で売上を伸ばしてきたからです。販売店を系列化して「●●社の製品」「●●社の製品取扱店」としてビジネスを成長させてきたため、日本の企業ではブランディングといえばプロダクト(製品)よりも、企業そのものをブランド化するコーポレート(企業)ブランディングが一般的でした。
けれども、複数の企業の製品を扱う量販店のような小売りの比重が高まるにつれて、日本のメーカーもプロダクト(製品)ブランディングを重視するようになっています。消費者が企業名で製品を比較するのではなく、製品同士で比較するようになってきたからです。ソニーやパナソニックのように、かつて企業ブランディングを活発に行っていた企業も、「ブラビア」「プレイステーション」「ビエラ」などプロダクト(製品)ブランディングを行っています。
コーポレートブランディングとの関連性
プロダクトブランディングは商品の売上にダイレクトに関係します。流行り廃りであったり、地域やライフスタイルであったりによって受け容れられ方が変わるため、消費者のニーズの変化に応じて、細かく調整していかなくてはなりません。同じカップ麺でも、西日本と東日本で味を変えていたり、同じお菓子でも子ども向けから大人向けに味やパッケージをリニューアルしたりと、ブランドの中身を変更していくことも珍しくありません。
一方、コーポレートブランディングでは短期的に変更をくり返すと、なかなか信頼を得られません。ミッションやビジョンなどの理念体系に基づいて構築していくため、抽象的になりがちですが、しっかりブランディングすることによって長期的な効果が見込めます。
プロダクトブランドとコーポレートブランドは互いに影響を及ぼし合いますが、どちらが強いかは企業によって異なります。
コーポレートブランドが強ければ、そのイメージの良さを活かして新たなプロダクトブランドを展開することもありますし、プロダクトブランドが強ければ、認知度の高さを活かして社名を変更することもあります。
一般的に、規模の小さい企業では商品やサービスの種類が少ないため、プロダクトブランディングとコーポレートブランディングはほぼ同義になることもあるでしょう。けれども、規模が大きくなってくると、扱っているプロダクトブランドの足し合わせだけではない、企業としてのブランド価値が出てきます。
プロダクトを複数持つ企業では、それぞれで最適なブランディングを追求していると、ブランド同士が食い合ってしまうなど、企業として見た場合には望ましくないポートフォリオになることもあります。その場合には、プロダクトブランドを整理して、コーポレートブランドの確立を図ることになるでしょう。
このように、プロダクトブランドとコーポレートブランドの関係は企業によって異なりますが、両者が密接に関係しているということはどの企業にも言えます。両方に取り組めば相乗効果が期待できますし、どちらか一方に取り組む場合には、もう一方についても頭の片隅に置いておくようにすると、より効果的でしょう。
プロダクトブランディングの効果が出ない時の対応
プロダクトブランディングを実施しても期待したような効果が出ない場合には、そのままにせず、ブランド戦略を見直して、対策を講じることが大切です。
顧客の製品に関する情報収集力は未だかつてないほどに高まっています。顧客の支持を得られなくなったブランドは価値がないばかりではなく、業績にも悪い影響を及ぼしかねません。現在ではインターネットを利用すれば、よりリアルタイムかつ詳細に、顧客の傾向や反響を知ることもできます。価値あるブランドを構築できるよう、ブランディングの方法や成果は随時、見直していきましょう。
また、歴史があって一見順調に販売できているような製品であっても、徐々に時代や顧客に合わなくなっていくこともあります。ブランド力が落ちてきている場合には、リブランディングによって、ブランド再生を図ることを検討してもよいかもしれません。但し、リブランディングはそれまでのブランディングに配慮しながら慎重に行う必要があります。消費者や外部の専門家の意見を参考にしたり、数値的な分析を行ったりして、客観的に検討を進めることが大切です。
ブランディングは抽象的で分かりにくいと思われがちですが、曖昧な理解のまま進めてしまっては、業績の向上やビジネスの成長につながりません。正しいブランディングの方法を知り、有効なブランドを築いていきましょう。
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