中小企業がブランディングを通じてワンランク上のステージに上がるには、何が大事だと思いますか?
成功している大企業と似たようなことを予算の範囲で試してみるのもひとつの方法かもしれません。けれども、大企業に負けないブランドを築くには、中小企業の魅力をひき出せる方法でブランド化を図ることが大切です。では、それはどのようなブランディングなのでしょうか。
Contents(目次)
大企業とは違うアプローチが必要な理由
美しい商品写真。印象的なキャッチコピー。
大企業がテレビCMや屋外広告、Webサイトや動画で展開するクリエイティブはカッコいいですよね。ブランドへの憧れが喚起され、購買意欲を高めます。自社のブランド展開を考えるにあたって、このような大企業のイメージアップ戦略を手本にしようと考える方もいるかもしれません。
しかし、もし、あなたが中小企業の経営者や社員ならば、大企業と同じアプローチでブランディングをすることはおすすめできません。なぜなら、かけられる資金やマンパワーに大きな差があるからです。似たようなブランドビジュアルが安くつくれたとしても、それは似て非なるもの。顧客の心を掴むには至りません。
では、中小企業はどのようなアプローチをとるべきなのでしょうか。
限られたリソースを有効に使うには、自社の良さを徹底的に分析することが必要です。そして、他にはない自社の魅力を、伝えるべき人に伝わるようにアピールする、これが中小企業に適したブランディングの方法です。
事業規模が小さければ、大勢に向けてアピールする必要はありません。その代わり、求めてくれる少数のファンに深く刺さるアピールをすることが重要です。大規模なブランド展開でなくても、ファッショナブルなビジュアルでなくても、その企業の等身大の姿が伝わってくれば、好感度は上がります。
自社の良さを見直し、他社の真似ではないブランドを構築して、自社のファンとなってくれる人に伝えていきましょう。
企業ブランディングで期待できる効果
企業ブランディングで得られる効果には次のようなものがあります。
- 企業イメージの向上
名も知れない企業とブランドとして知られている企業とでは、第一印象が違います。ブランディングを実施することで、企業に対する良いイメージを形成できます。
- 企業に対する信頼感の向上
企業としてのブランドが確立できていれば、顧客は「あの会社なら大丈夫」と信頼を寄せます。そうなれば、取引や融資、採用などもスムーズです。
- 商品やサービスへの信頼感の向上
ブランドの特徴をはっきりと打ち出せれば、ノーブランドの商品と比べて、商品への信頼感も高まります。ブランディングは取り扱う商品やサービスへの顧客の態度も変えるのです。
- 業績の向上
企業イメージが向上し、信頼感が高まれば、商品の売上にも影響が及びます。売上高が伸びるだけでなく、ブランド価値が上がる分、収益性も高まるでしょう。
- 社員の士気向上
魅力的なブランドとして周囲に認知されれば、社員の働きぶりも変わってきます。企業の一員であることに誇りを持ち、ブランドの魅力を高めるような仕事をしてくれるでしょう。
中小企業でも、自社の持ち味を見直し、その特徴をはっきりと打ち出せれば、このような好循環が生まれます。
ブランディングの効果を倍にするポイント
コーポレートブランディングの効果を高めるには、共感してくれそうな顧客層に照準を絞って、ブランドの魅力を伝えることが大事です。ブランドの魅力をしっかり伝えるには、以下の2点を意識すると効果的です。
①顧客がその企業と接するタッチポイントすべてにおいて統一感があること
②その企業といつ接しても一貫性が感じられること
どういうことか、例えを用いて考えてみましょう。
まずは「統一感」です。
・カタログはずば抜けてセンスがいいのに、Webサイトや名刺がどことなく野暮ったい会社
・店舗の内装も商品のパッケージも店員の制服も、同じ雰囲気でまとまっている会社
どちらの会社が印象に残るでしょうか。
顧客の印象は、ブランドに対する全体的な評価で形成されていきます。そのため、前者のように一部だけ力を入れたとしても、ブランドイメージを変えることはできません。むしろ、統一感がないことで中途半端な印象を残し、かえってマイナスの効果を生む可能性もあります。
ブランド開発の下準備として、ブランドオーディットを行います。これは顧客と企業との接点で使われているビジュアルを洗い出してみる作業ですが、意外と見落としがちなポイントも多いものです。もし企業ロゴをつくったのなら、そのロゴを名刺や封筒、営業資料やトイレの張り紙まで、徹底的に使いましょう。
あらゆるタッチポイントで共通の印象を与えるようにすると、ブランディングの効果が高まります。
次に「一貫性」です。
・去年はお得感を激しくアピールしていたのに、今年は高級感を出しているWebサイト
・いつ見てもクラシックな雰囲気で安定感のあるWebサイト
どちらの会社が印象に残るでしょうか。
ブランドに対するイメージは長い時間をかけて、蓄積されていくものです。一度受けた印象がよくても、その後に違った印象を受ければ、ブランドへの信頼が低下します。ブランディングは継続して行うことで、効果が高まるのです。
これはブランドプロジェクトを長期間行うという意味ではありません。プロジェクト終了後にブランドがないがしろにされることのないように、日常業務のなかにブランドを根付かせていくということです。社内にブランドを浸透させたい場合には、インナーブランディングにもあわせて取り組むことをおすすめします。
自社の持ち味が活きるブランド開発プロセス
自社の魅力を充分にひき出し、ブランドとして育てていくには、ブランド開発プロセスでも意識したいポイントがあります。それは全社で取り組むことです。また、例えでご説明しましょう。
これからブランドコンセプトをつくります。
A社では、社長がトヨタや松下を尊敬しているので、そうした成功事例をよく分かっている社長と経営幹部が1ヶ月カンヅメになって、最高のブランドコンセプトをつくりました。
B社では、社長の思いも大事にしつつ、お客様や営業マン、総務スタッフや出入り業者にも話を聞きながら、自分たちの良さをみんなで考えてコンセプトをつくりました。
どちらの会社の方が強固なブランドを築けるでしょうか。
関係者を巻き込んでつくったB社の方だと思いませんか? B社の社員はA社の社員に比べて、ブランドに対する理解も深いでしょう。実際に、顧客に接するのは現場のスタッフです。立派なコンセプトをつくっても、顧客との接点にたつ社員がブランドを理解し、実践できなければ、顧客には伝わっていきません。
また、自社のどのような点が顧客に受け容れられているのかをよく知っているのも、顧客との接点に立つ人です。B社のように、創業者のビジョンに加えて、顧客が自社を選ぶ理由など、多角的に自社の魅力を突きつめることで、他の会社にはない持ち味が見えてきます。それを素直に表現すれば、伝えるべき人に魅力が伝わるブランド展開ができるのです。
同じ時間とお金をかけるなら、大きな効果を得たいものです。ブランディングに取り組む際は、全社一丸となってブランドを育てていきましょう。
真のブランド企業になるには
企業ブランディングと混同されがちなものにCIデザインがあります。企業ロゴの作成など、どちらも似たようなことをするからです。
CIはコーポレートアイデンティティの略で、企業が扱うビジュアルを統一するものです。デザインガイドラインを設け、ロゴも含めて、その企業が扱うビジュアルが同じトーンでまとまるようにしていきます。一方、ブランディングは、顧客がブランドから受けるイメージを向上させていくものです。ロゴも含めて、ブランドコンセプトに沿ったコミュニケーションツールを開発し、顧客に対してブランドを発信していきます。
CIを確立してデザイン的には他社と識別できても、ブランディングがきちんとできていなければ、その企業が訴求したい魅力は伝わりません。ただ単に、ビジュアルデザインを重視している企業になってしまいます。
顧客が価値を感じるのはブランドの思想が反映されたデザインです。真のブランド企業となるためには、ブランドの存在意義を明確にし、すべての事業活動でブランドポリシーを貫くことが求められます。
中小製造業のブランドコンセプト事例
当社がコンサルティングをさせていただいた企業のなかから、製造業のブランディング事例を2つご紹介します。
①“サーバーラックの専業メーカー” 〜専業である強みを活かしてポジションシフト
コンピューターの周辺アイテムとして扱われがちなサーバーラックだが、ただ設置できればいいというものではありません。IT業界出身の社員が多く、顧客によって異なる環境に適したサーバーの設置方法を提案できる強みを全面に出し、ITソリューションベンダーとしてブランディング。売上は3倍以上、サイトCVRは14倍以上になりました。(事例の詳細はこちら)
②“モノづくりに関する課題解決サービス” 〜モノづくりを核としたサービスブランド構築
価格競争が厳しい日用雑貨の製造業。将来を見据えて、クライアントありきの受注体制を見直し、提案型ビジネスへと転換しました。その核となったのが新たなサービスブランド。企画から受注できる体制を整え、企画・設計から試作・量産までワンストップで提供するサービスを構築しました。これにより、製造業者とも企画会社とも差別化できました。(事例の詳細はこちら)
フルスロットルは中小企業に特化したブランディング・プロフェッショナルチームです。
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