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ブランディングとは、「伝えること」ではなく「理解してもらうこと」
そもそも論のお話をひとつ。ブランディングの話がされる際に、よくマーケティングの一部だとか言われることもありますが、実際のところ明確に言いますと、マーケティングは「伝えること」であり、ブランディングは「理解してもらうこと」と言えます。ここでお気づきのかたもいらっしゃるかと思いますが、「伝えること」=マーケティングはPushでありこちらからの一方的な発信に近いです。一方で、「理解してもらうこと」=ブランディングはPullであり、先方が自発的に理解をし好意をもってもらうようにすることです。いわば、自社に対して好き嫌いのレベルを超えた部分で愛してくれている状態、ロイヤルカスタマー(ブランドへの忠誠心の高い顧客)やメンター(助言者)を作っていく活動に他なりません。それは社外だけでなく、社内に対しても必要です。社内外から愛される会社をどのように作っていくか、それを実例とともに紐解いていきます。
自社の仕事の提供価値を180度変える努力(モノからコトへ)
過去に、産業廃棄物処理を主事業とする某企業(従業員30名弱)のブランディングを担当しました。その際、どうしても業界的にグレーな印象があるということで、そのイメージを払拭するようなフレッシュで若々しく、将来的に期待の持てる企業ブランドにしていこうということでブランディングを着手しました。まずは業界動向、競合の動きなどを把握し(SWOT/3C4P分析)、自社の立ち位置や将来像などと照らし合わせながら現状分析を十分に行いました。その結果、単なる産業廃棄物をただただ処理することが自社の目的ではなく、顧客の産業廃棄物処理の最適化を進めていくことで、顧客の社会的評価の向上と顧客のビジネスの最大化をご支援することが自社の大きなミッションであることに気づきました。これは非常に大きな価値ある気づきでした。いわゆる、単なる産業廃棄物処理事業(モノ)から、顧客の価値創造を支援する産業廃棄物管理事業(コト)へのソリューションシフトがここで発生したことになります。このアプローチを行うことで、すでに同じ業界内でも新しいポジションを築くことができますし、対外的にも「他と違うアプローチで新しい提案をしてもらえそうだ」という営業的に強いフックを掛けることができます。誰がやっても同じ仕事は近い将来、確実に競合が増え、価格競争に陥り、それだけで差別化を図ることは困難になります。ですが、同じ仕事であっても、自社だけが持つ独自のノウハウや実績、またパートナーネットワークや顧客とのつながりなどありとあらゆる自社リソース(資産)を改めて精査し、時代の流れ(トレンド)と照らし合わせることで、「今、自分たちにできることはなにか?自分たちにしかできないことはなにか?」を徹底的に考え、議論していくことで新しいアプローチの方策や新しい価値創造をしていくことはどの会社でも十分に可能なのです。
インナーブランディングとアウターブランディングの並行開発
独自のアプローチの方策が固まれば、それを自社と関わりのあるステークホルダー(利害関係者)に発信していくことが必要です。この動きにおいて、社内に対して発信していくことを「インナーブランディング」と言い、社外に発信していくことを「アウターブランディング」と言います。基本的に社内外ともに発信していく大きな枠組みは同じなのですが、発信する内容の切り口とツールが異なります。
インナーブランディングの場合、特に会社から社員に対して、会社の方向性やビジョンなど、新しいアプローチを行うことで将来どうなっていきたいか、また、それを進めていく上で社員に何を求めるのか、をハッキリと伝えます。これをすることで社員は、とるべき行動が明確になり、全社一丸となってひとつの目標に進んでいくことができます。ブランドブックと言われる会社の方向性を整理したブックレットであったり、クレドと言われる、社員がとるべき行動指針を明確にしたツールなどが活躍します。また、今の時代においては自社のWebサイトなどでもブランドページを設け、自分たちが大切にしていること、これから向かうべき方向性や将来のビジョンなどを発信していくことも非常に重要です。要は、何か判断に困った際などにすぐに指針の確認ができるような状況にしていくことが大切です。某社の場合は、新しくブランドスローガンを制定し、それらをクレドにまとめ、毎朝全員で唱和することで、ビジョン・意識の共有を行っています。
次に、インナーブランディングが固まった段階で対外的に発信していくアクションが必要となります。一般的にアウターブランディングと呼ばれますが、顧客が触れるすべてのタッチポイント、例えば名刺、Webサイト、会社案内、サービスカタログ、提案書、見積り書、広告などすべてのコミュニケーションツールのデザイントーンと含まれるメッセージの内容を統一していく作業がそれになります。某社の場合は、会社のシンボルロゴから変えましたので、名刺、封筒、屋外サイン、Webサイト、カタログ、各種フォーマット類、リクルートサイト、リクルートパンフレットなどすべてのツールの新規開発を行いました。このブランドチェンジにはそれ相応のコストもかかりましたが、それ以上に得るものも多く、完全なるブランドチェンジによる企業価値の大幅向上と、業界におけるポジションのシフトを実現しました。それと、今まで中小企業がメインターゲットでしたが、事業のソリューションシフトも行うことで今までお付き合いが難しかった大企業を顧客としていくことに成功しました。自社の事業継続性と提供価値向上を考えた場合、現状の事業をベースとしたリブランディングは非常に大きなメリットがあると断言できます。
新しい価値を提供することで、顧客の信頼を得る
本文の最初に、ブランディングとはPushからPullへの変化だと述べました。本質的にはもちろんそうなのですが、最初からPull型にできるワケはなく、やはり初期構築(ブランド開発)と発信(Push)は必要で、ブランデングした直後は関係者に知ってもらうことも重要です。ただ、そのあともずっと自分たちの側からPushばかりしていては情報を受け取る側も「またか」となって好意のトーンが下がります。顧客が本当に知りたいことや、業界トレンド的に必要とされている情報などをうまくコントロールしていくことで、単なるPush型から能動的なPull型へのシフトを実現し、新しい問合せや見込み顧客を得ることができます。コンテンツマーケティングもそのひとつですが、いろいろなデジタルマーケティングのサービスや手法を活用しながらもうまく顧客の興味を引き、自社とつながり続けることのメリットを感じてもらえれば、顧客との関係も深めていくことができますし、その時間とアクションの積み重ねの結果として顧客の「確固たる信頼」を得ることに繋がります。
改めて整理すると、十分な自社研究の結果としてのベースブランドをまずは構築し、それを同じトーンで社内外に発信し、市場が顧客や本当に欲している情報や製品・サービスを提供し続けることが、未来永劫愛されるブランドをつくる秘訣であり、顧客からの固い信頼を得ることができ、自社の継続的な企業価値の向上と発展につながっていくのです。
>>後日談
こちらの企業でともにゼロから開発をさせて頂いた新サービスが、公益財団法人 川崎市産業振興財団主催のかわさき起業家オーディションにて、かわさきビジネス・アイデアシーズ賞を受賞しました。企業として、創業から61年という歴史がありながらも、時代のニーズに対応した先進的なサービスが評価され、起業家精神にあふれる優れたプランに送られる同賞の受賞に至ったとのこと。サービス開発から3年経過しますが、その間、お客様側でもサービスのブラッシュアップと機能追加においていろいろとトライアンドエラーを繰り返され、サービスとしてのレベルが大きく向上したことは言うまでもありません。
このように新しく開発した事業やサービスブランドが、対外的に認められ認知されていくことは非常に有難く思いますし、やはり私たちのアプローチは間違っていなかったと再認識することができました。これからも、多くの企業様のブランド開発、事業刷新の支援を通じて、お客様の企業価値最大化に努めるとともに、私たちも日々研鑽を積んでいこうと思いを新たにしています。
サービス受賞にあたっての評価のポイント 新規性
単純に処理会社の選定を代行する類似サービスは、市場に一定数存在する。しかし、その中でも、専用クラウドシステム等を活用した業務プロセスの合理化という要素によって、新規性を付加している。
優位性
顧客が享受するメリットには、単純な値引きだけではなく、業務プロセス合理化によるコストダウン(間接コストの削減)がある。そのため、処理内容自体が他社と同程度の提案であったとしても、価格優位性を獲得することができる。 また、廃棄物管理のリスク調査等のサービスを提供しており、こうした活動によって蓄積したノウハウを応用することにより、コスト面だけでなく、リスク面での信頼性も高めることができる。
市場の規模
国内産業廃棄物総排出量:約 3 億7900万t
関東地区産業廃棄物総排出量:約1億186万t(中部:5610万t)
※環境省発表、産業廃棄物排出・処理状況調査(平成24年度実績)より
不法投棄の件数:165件、不法投棄量:2.9万t
不適正処理の件数:146件 、不適正処理量:6.0万t
※環境省発表、産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成26年度)について より
市場での競争力
市場のコンプライアンス意識が高まる中、ITツールを活用した業務プロセス合理化によって、リスクを高めずにコストダウンを可能とする内容を打ち出すことができる。 企業に対する、コンプライアンス徹底を目的としたコンサルティング実績によって、本事業の信頼性も高めることができる。