リブランディングとは、既存のブランドを時代や顧客に合わせて再構築することです。ブランドは変化していくもので、一度つくったら終わりではありません。長く愛されるブランドを築きたい企業にとって、適切なタイミングでリブランディングを行うことは重要です。
この記事では、リブランディングという言葉の意味から実施の手順や注意点、成功事例まで、関連する知識をまとめて紹介します。
Contents(目次)
リブランディングとは
「リブランディング」は「ブランディング」に「再び」を意味する「re」がついたものです。ブランド再生、ブランド再開発と言い換えてもよいでしょう。今ある経営資産やブランド資産を活かしながら、新しい時代や顧客にも受け容れられるブランドへと定義し直すことをリブランディングと言います。
ブランドの現状を把握した上で、新たに目指すブランド像に近付けるため、商品パッケージを新たな顧客が好むようなデザインに刷新する、時代に合わなくなったサービスを見直すなどの活動を行います。
どんなに良いブランドでも、訴求のしかたが立ち上げ当初からまったく変わらなければ、顧客は離れていってしまいます。老舗企業やロングセラーブランドが愛され続けるのは、ブランドイメージが変わらないように、商品やサービスの内容、そのアピールのしかたを時代に合わせてチューニングしているからです。
ブランドを維持・成長させていくためにも、リブランディングは欠かせません。
リブランディングを実施するメリット
リブランディングでは既存のブランドを見直し、その魅力をより効果的に伝えていきます。
どんな企業にもブランドは存在します。高級ブランドや有名ブランドばかりがブランドではありません。ブランド力の強さは企業や商品によって異なりますが、伝えるべき魅力はどこかにあるはずです。BtoB企業や中小企業も例外ではありません。
リブランディングは、既存のブランド資産を利用するため、ブランドを新たに開発する場合と比べて、コストを抑えることができます。ここまでブランドを育てるためにかけてきた資金や労力が無駄になりません。
また、ブランドを廃止せずに維持し続けることで、これまで支持してきてくれた顧客に報いることができます。
複数のブランドを保有する企業が、いくつかのブランドのうち、古くなったブランドを切り捨てたことで印象を悪化させ、同じ企業の他のブランドに影響が及ぶということもあります。
ブランドは企業にとって貴重な資産です。たとえ低迷していたとしても、簡単に切り捨てず、可能な限り、有効活用するべきでしょう。
リブランディングでブランドの価値を再定義し、50年先、100年先を見据えたブランドに生まれ変われば、次の時代を生き抜いていくための武器になります。
リブランディングの実施手順
リブランディングを実施する際には、まず現在のブランドの状況を理解する必要があります。
そのために、現状のブランドイメージやブランディング手法を精査し、現時点でのブランドのポジショニングを調査します。3C分析や4P分析、SWOT分析などにより、「いま自分たちがどのポジションにいるのか?」「競合はどこに位置しているのか?」「我々の強みと弱みは?」「差別化の方向性は?」など、事業内容やブランドを徹底的に見直します。
現時点でのブランドの問題を特定できて初めて、新たなブランドのプランニングに入ります。どんな顧客に、どのようなメッセージを伝えるのかを明確にし、それを伝えるにふさわしいコミュニケーション方法を検討するのです。顧客へのアピールポイントの変更や広告の内容の一新など、具体的な表現方法を検討していきます。
参考リンク:フルスロットルが推奨するブランド構築フロー「5 Core Method」
リブランディングを実施すべきタイミング
ブランド表現が古くなっている時
現在のブランドの状況を点検して、商品やサービスそのものには問題がなかった場合、パッケージや広告のデザインを変更するだけでも十分な効果を得られることがあります。時代が進めば、顧客のデザインの嗜好が変わりますし、技術の進化によって、新しい表現も可能になります。古くなっていたブランドの表現を改めることで、イメージを新鮮に保つことができます。
ブランドのポートフォリオが好ましくない時
複数のブランドを展開している場合、自社のブランド間で同じターゲットを取り合っていたり、商品やサービスの内容が重複していたりすることがあります。企業全体の売上や顧客の反応を調べてみて、このような問題が見つかった場合は、似通ったブランドを統合したり、ブランドの一つを中止したりすることで、企業全体としての売上を向上させることができます。
ブランディングが上手くいっていない時
ブランディングを実施しているものの、ブランドに対する誤解が生じている時や狙ったターゲットに伝わっていない時はリブランディングが必要です。ブランドの提供している価値を見直し、より効果的に伝わるよう、ターゲットやメッセージを設計し直します。
市場環境が変わった時
最初は受け容れられていた商品やサービスも、時代の変化によって受け入れられなくなることがあります。原因はさまざまです。競合が成長してくる場合もあれば、新技術が登場して相対的に価値が下がる場合もあります。また、年数が経つにつれて、顧客の価値観も変わっていきます。年齢を重ねたり、社会の価値観が変化したりすることで、好みのブランドが魅力的に見えなくなっても不思議ではありません。これらの場合にはブランドが提供する価値やポジショニングを検討し直す必要があります。
新たな市場に参入する時
新たな市場に参入していく時には、競合との差別化が欠かせません。自社の立ち位置を明確にして、ブランドを再構築する必要があります。
将来の方向性や理想を打ち出したい時
リブランディングはブランドが低迷している時だけでなく、ブランドが成長している時に取り組むことも効果的です。将来を見据えた理想のブランド像を描き、それに近付くためのブランディングを行います。
リブランディングの成功事例
ここでリブランディングについて理解を深めるのに役立つ事例をいくつか、ご紹介しておきます。
祇園辻利
1860年の開業以来、宇治茶一筋を通してきた老舗の茶屋は商品パッケージをリニューアルしました。 ペットボトルで手軽にお茶が飲めるようになり、時代とともにお茶のイメージも変わってきていますが、改めて伝統的な急須で入れるお茶の良さを伝えることを目指しました。折り紙をモチーフとしたパッケージは和の心を伝えつつ、過剰包装を回避するデザインで、2011年のグッドデザイン賞を受賞しています。
参考記事:グッドデザイン賞ホームページ『2011年受賞対象』
画像引用元:AID-DCC Webサイト
https://www.aid-dcc.com/works/gion_tsujiri
セブンイレブン(スウェーデン)
スウェーデンのセブンイレブンではレジ横で販売するコーヒーのカップや紙袋などのデザインを一新しました。従来のデザインはパパママストアの店員を思わせ、よいコーヒーのイメージとは結びつかなかったからです。緑、オレンジ、黄色の特徴的なストライプは残しつつ、線の濃淡で「7」を表現し、シンプルでモダンなデザインに。商品棚周りもあわせて変更し、印象を大きく変えました。
画像引用元:FAST COMPANY 『Re-branding 7-Eleven With A Bold, Retro-Nostalgic Style
https://www.fastcompany.com/1671683/rebranding-7-eleven-with-a-bold-retro-nostalgic-style
湖池屋
カラムーチョやスコーン、ポリンキーで知られる湖池屋は新社長の就任にあたり、「妥協なく一番おいしいポテトチップスをつくる」という原点に立ち返りました。リブランディングを象徴する商品として新たに発売したのが「KOIKEYA PRIDE POTATO」。強い思いを表すため、従来のポテトチップスのパッケージとは一線を画した商品パッケージを採用、CMもインパクトのある内容としました。リブランディングに成功し、商品がヒットしたほか、社内の活性化にもつながっています。
参考記事:電通報『“伝えるべき魅力”に集中したことで話題化に成功 ―新生・湖池屋のリブランディング戦略―』
画像引用元:湖池屋Webサイト
https://koikeya.co.jp/news/detail/808.html
ニコン
光学技術を中心に成長してきたニコンは、節目ごとにブランドシンボルも変えてきました。時代のニーズに応える姿勢を伝えるため、2003年に15年ぶりにブランドシンボルを変更。コーポレートカラーのイエローは変えずにイメージを保ちつつ、鮮やかなトーンに変えてリフレッシュ。ホワイトで「連続した光」を表現し、未知の可能性を表しました。新しいシンボルはグループの企業ロゴや商品パッケージ、広告やホームページ等に使用し、新たなブランドイメージの浸透を図っています。
画像引用元:インターブランドWebサイト
https://www.interbrandjapan.com/ja/work/Nikon.html
ダイワハウス
ダイワハウスは創業50周年を機に、新たなグループシンボル「エンドレスハート」を制定しました。グループ会社を含め、Webサイトやオフィス、パンフレットや広告など、顧客とのあらゆるタッチポイントで、このシンボルを使用。経営ビジョンに掲げた「心をつなごう」に基づく新たなブランドイメージを社内外に伝えています。
画像引用元:インターブランドWebサイト
https://www.interbrandjapan.com/ja/work/Daiwa-House-Group.html
ヤンマー
ヤンマーは創業100周年を機にリブランディングに着手。「プレミアムブランドプロジェクト」として、ミッションステートメントの実現に取り組みました。典型的なBtoB企業で、一般消費者との接点が少なかったことから、メッセージを伝える媒体をひと工夫。テレビや印刷物を使った広告ではなく、トラクターのコンセプトモデルや新しい農業ウェアの提案を行いました。新社屋も次の100年へ向けた取り組みを伝えるものとして、自社技術を結集した最新のビルとなっています。リブランディングを通じて、従来の顧客以外にも広く、新しいイメージをアピールすることができました。
画像引用元:ヤンマーWebサイト
リブランディングの失敗事例
リブランディングをする際は、新たにブランドを構築する場合とは異なり、今までのブランドの成果を評価する必要があります。この評価を誤ると、適切な対応をできず、失敗につながります。
リブランディングの失敗事例としては、1985年のコカコーラ騒動が知られています。
当時、競合にシェアを奪われていたコカコーラは、長年、守り続けてきたコカコーラの味を変えるという、大きな賭けに打って出ました。慎重にリサーチを重ねた上でのリニューアルでしたが、顧客の従来の味への思い入れは強く、大きな反発を招きました。批難や抗議が相次ぎ、結局、コカコーラは半年も経たないうちに元の味に戻す決断をしました。
このようにブランド再生によって、かえって顧客を失うことのないようにするためには、現在のブランドを正しく評価することが重要です。
現在のブランドを評価するにあたっては、顧客の視点に立った価値を把握しなくてはなりません。
また、客観的なデータに基づいて、ブランドの売上を把握する必要があります。売上を見る場合は、季節変動や一時的な変化に左右されないよう、短期的な売上とともに、長期的な売上も見直しましょう。
参考記事:コカコーラホームページ『マーケティング史に残る失敗か、はたまた戦略的な“投資”か──。 発売即“大炎上”した「ニュー・コーク」の真実』
リブランディングを成功させるためのポイント
リブランディングを成功させる上で重要なのは、リブランディングの対象となる組織やサービス、商品の内容を十分に理解することです。
成功したブランドを単に模倣するだけでは、適切なブランディングはできません。従来のブランディングに満足がいかない場合も、どのような点に不満があるのかを明確にしておく必要があります。 顧客は商品パッケージやWebサイトのビジュアルだけに魅了されているわけではありません。徹底的に自社のブランド資産や経営資産を見直すからこそ、企業の個性が際立ち、ユーザー・クライアント・株主・従業員などすべてのステークホルダーに愛される、ユニークなブランドになるのです。
けれども、客観的に自社のブランドを評価することは決して簡単ではありません。正しく現在の姿を評価するためには、専門的な知識を持ったブランディング企業を活用することをおすすめします。従来のブランド開発メンバーに加えて、外部の専門家が入ることで、まったく新しい観点からブランドを再構築できるからです。
まずは、現状に対するビジネスオーディット(事業展開状況調査)とデザインオーディット(デザイン展開状況調査)を依頼してみてはどうでしょう。自社のブランドがどのように展開され、ユーザーに認知されているかを客観的に知ることができます。新たな目で見直せば、これまでに気付かなかった課題を見つけることもでき、より効果的なブランドを構築するのに役立つことでしょう。
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